【糖尿病による壊死を防ぐ治療法マゴットセラピー】糖尿病による壊死の脚切断防ぐ治療

医療

マゴットセラピー解説書

以前から気になっていた、
糖尿病などによる壊死により、
脚を切断しないといけない場合の変わった治療があります。

それについて書きたいと思います。

糖尿病による壊死による切断を防ぐ治療に
マゴットセラピーという治療があります。

マゴットセラピー提携病院一覧

糖尿病とウジ虫治療-マゴットセラピーとは何か (岩波科学ライブラリー)

マゴットセラピー―ウジを使った創傷治療

マゴットセラピー

マゴットセラピーとは

どういうのかと言うと、ウジを使う治療です。

糖尿病足壊疽などの治癒しにくい四肢潰瘍に対し、ヒロズキンバエの幼虫である
ウジ(=英語でMaggot:マゴット)
を用いて治癒を促す治療法

のことです。

マゴットを用いた医療は古代から行われてきたものでありますが、その記録は殆ど書き残されていません。

欧米では、感染した傷がウジによって有益な影響を受けることが、従軍外科医によって観察され書き留められています。

傷の回復を助けるために意図的にウジを用いるようになったのは、
20世紀初頭になってからですが、
抗生物質の発見や進歩した外科技術により、
次第に下火になっていきました。
 
しかし、最近になって、糖尿病足壊疽患者の増加や薬物耐性の感染の増加などにより、
再びマゴットセラピーが脚光を浴びるようになってきました。

マゴットセラピーの機序

マゴットセラピーの機序 

マゴットセラピーはいかにして四肢潰瘍を治すのでしょうか?

現在のところ詳細なメカニズムはわかっていませんが、
いくつかの機序が考えられています。

 1つ目は、ウジが壊死組織をきれいに食い尽くしてくれるということです。
ウジの好物はあくまで壊死した組織で、正常な組織を食べてしまうことは絶対にありません。
 外科的に壊死組織を除去するよりもマイルドで、出血したりすることもほとんどありません。
 
 2つ目は、ウジが壊死した組織以外に感染したバイキンも食べてくれるという事です。
苦手なバイキンもありますが、ほとんどのバイキンを食べてくれます。
また、バイキンを殺すたんぱく質を分泌しダブルの効果で
抗生物質の効きにくいメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)にも負けません。
 
 3つ目は、ウジが創部の上を動き回ることで刺激され、
新しい組織形成が促されるということです。
壊死組織が取り除かれるだけでは傷は治らず、新しい組織ができてくれないといけません。
ウジによる機械的な刺激が創傷治癒を促します。

マゴットセラピーーの機序 2
3つのメカニズムを検討してみると、
どういった症例がマゴットセラピーの適応になってくるかがわかります。

すなわち、バイキンが傷の治りを悪くしていて、
しかも従来の抗生物質や外科的処置によっても改善が見られない場合が適応となります。
 
四肢の潰瘍は、血行不良でも生じますが、血行をよくする作用は
マゴットセラピーにはありませんので、血行障害による潰瘍には適応がありません。

 したがって、感染性壊死と血行障害による壊死の識別が必要となってきます。
おおよその目安としては、痛みを伴う潰瘍は血行障害によるもの、
痛みを伴わない潰瘍は感染性のものと考えてよいでしょう。

マゴットセラピーの短所

マゴットセラピーの短所

マゴットセラピーの副作用とその対策

海外での使用実績からはマゴット(医療用ウジ)の使用による重大な副作用は報告されていませんが、下記の様な症状が生ずる可能性があります。

1.疼 痛 

「つつかれるような感じ」から「痛み」まで表現は様々ですが、5~30%の症例に認められるといわれています。糖尿病性潰瘍・壊疽の場合は比較的軽度ですが、治療前から痛みが生じていた場合や閉塞性動脈硬化症(ASO)・閉塞性血栓性血管炎(バージャー病)などの末梢動脈性疾患では強い痛みを感じることがあります。
マゴットによる直接的な機械刺激や創面のpH上昇が原因と考えられています。通常は鎮痛剤の内服や筋肉注射にてコントロール可能ですが、治療前に強い痛みが予想される時は硬膜外チューブをあらかじめ挿入し、持続硬膜外麻酔下に治療を行う場合もあります。もし痛みが強く我慢できない場合はマゴットを患部より取り除くことですみやかに症状は消失します。

2.出 血 

1%未満の割合と言われていますが、創面からの出血も報告されています。出血性素因がある場合や創面に露出する血管壁の一部が壊死を起こしている場合に生じやすくなります。通常は微量な出血ですみますが、出血が持続する場合はマゴットを取り除くとともに止血処置が必要となります。

3.発 熱 

一時的な発熱が認められることがあります。メカニズムは不明ですが、マゴットの分泌物に含まれるサイトカインという炎症物質が原因とも考えられています。解熱剤の使用にても発熱が持続する場合はマゴットを取り除いてみることも必要となります。

4.感染,炎症による創傷悪化

マゴットは特別な消毒処理を行っており、明らかな病原菌の媒介は報告されていません。しかしマゴットセラピーを行うことにより蜂窩織炎の悪化など既存の感染や炎症が増悪したケースも報告されています。このような場合は治療の中止が必要となります。

5.臭 気

マゴットが壊死組織を融解するために、一時的に創部からの浸出液がアンモニアと類似した臭気を発します。外側のガーゼ交換や消臭剤の使用で対処します。

6.高アンモニア血症

1万匹を超える幼虫に感染した家畜が、幼虫が放出するアンモニアによって高アンモニア血症を起こした報告があります。マゴットセラピーにおいてはこのような多数の幼虫を用いることがないため、有害な高アンモニア血症が起こった事例は過去に報告されていませんが、原因不明の発熱・精神症状・食欲不振などが持続する場合は、血中アンモニアの測定とともに幼虫を取り除いてみることも必要となります。

マゴットセラピーでの禁忌・慎重使用例

下記項目に該当する場合は禁忌または慎重使用例と考えられます。
十分検討の上使用を決定し、治療中は十分な観察をするとともに、有害な事象が出現した場合は直ちにその使用を中止して下さい。

<禁忌症例>

・著しい血流障害を伴いその改善が困難な場合。
・患部感染が急速に進み外科的切除の早期施行が必要とされる場合。
・太い血管または消化管が露出している創。
・コントロール困難な出血性疾患を合併する場合
・体内深部に通じる創。
・ウジに対する過敏症(アレルギー)を有する場合
(過去に医療用ウジの使用で過敏症を 起こした経験がある場合)。

<慎重使用例>

・骨壊死を伴う場合 →マゴットによる摂食が不可能なため、外科的切除が必要となります。
・深部膿瘍を伴う場合 →マゴットによる摂食が不可能なため、治療前のドレナージが必要となります。

しかし、多くの場合は有用性の方が勝り、高い治癒率を望めます。
ある報告によりますと、
マゴットセラピーの成功率は80~90%と
言われています。

マゴットセラピーは自由診療

ただ、日本ではマゴットセラピーは、
まだ自由診療のようです。
、つまり【保険が効かない】

Q:マゴットセラピーは保険で認可されているのですか?

A:治療が広く普及している欧米では保険認可されている国が多くありますが、
  日本ではまだ認可されていません。

Q:治療費はどのくらいかかりますか?

A:日本国内ではまだ保険で認可されておらず、
  治療は自由診療となり原則として全額自費扱いとなります。
  治療費は患部の状態や入院期間によって異なってきます。
  まずは治療を行う医師に御相談下さい。

※ただし自費負担となる期間はマゴットセラピーを実施している期間
(患部にマゴットがある期間)のみで、その他の期間は通常通り保険診療とすることが可能です。

マゴットセラピーにかかる費用


糖尿病とウジ虫治療-マゴットセラピーとは何か (岩波科学ライブラリー)

説明

内容紹介

四〇代以上は三人に一人が糖尿病になる時代.自覚症状がないまま進行し,気づいた時には足の潰瘍・壊疽により,下肢切断を余儀なくされる人も少なくない.いま切断せずに画期的に潰瘍を治癒する方法がある.なんとハエのウジ虫を使う.それはいったいどんな治療なのか.なぜハエなのか.驚きの治療の実際としくみを解説する.

内容(「BOOK」データベースより)
四〇代以上は三人に一人が糖尿病になる時代。自覚症状がないまま進行し、気づいた時には足の潰瘍・壊疽により、下肢切断を余儀なくされる人も少なくない。いま切断せずに画期的に潰瘍を治癒する方法がある。なんとハエのウジ虫を使う。それはいったいどんな治療なのか。なぜハエなのか。驚きの治療の実際としくみを解説する。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

岡田/匡
1958年大阪府生まれ。
奈良県立医科大学卒。
奈良県立医科大学皮膚科を経て、1997年より、マミ皮フ科クリニックに勤務。2011年に一般社団法人ジャパンマゴット治療教育推進協会理事長に就任し、日本における同治療の普及活動に努める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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